東京通信

ファッション、カルチャー

東京ストリート⑦スキニージーンズ論

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 2006年の秋冬くらいから猛烈なスキニージーンズブームは訪れた。スキニーという響き自体が全くの未知であった。メンズノンノやらなんやらがこぞってスキニー特集を組んでいたのを覚えている。

当時高校3年だった自分にとってはこの時の出来事が強烈に記憶されている。高校には制服がなく、当時の僕はテーパードで細いパンツが欲しくてたまらなかった。メンノンやチョキチョキのスナップではユニクロの黒のパンツを縫って細くリメイクしたり、X-girlのレディースのパンツを穿いている人達が載っていた。個人的にはBOONのジーンズ特集を読み、505より更にテパードされ細身に作られたリーバイス606に目を付けリーバイストアに行く計画を着々と進めていた。(結局これは計画止まりで実行されなかった。)モバオクで今でいうスキニーなパンツを探そうにも当時は目ぼしい単語すらなかった。スリムパンツとかそんな感じのキーワードで検索していた記憶がある。

 

そんな折りに、革命が起こった。2006年夏、ユニクロはレディースのスキニージーンズを発売したのだ。発売とほぼ同時で僕はユニクロへ行き、28インチのレディースのスキニーを買った。膝から下にかけて肌に吸いつく穿き心地に最初は違和感があったが鏡を見ると自分が思い描いていた通りのシルエット!あの感動は忘れない。案の定、学校に着て行くと何だそれ?スパッツ?と馬鹿にされたのだが周りが思っているより普遍性のあるデザインだと見抜いていたので、まあ勝手に言ってろよと内心思っていた。その後のスキニー大流行は僕にとっては想定内だったのである。

そのジーンズはクラッシュジーンズへとリメイクしてしまったが今でも捨てずに持っている。久しぶりに穿いてみようか、穴空いてて涼しいし。

 

細身のパンツをかなり早い段階から穿いていたと思われるのは元スケボーキングのSHIGEOだ。昔はよく雑誌の表紙を飾ったりしていた。

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なんと懐かしい空気感。あれ?隣誰だ?今宿麻美じゃないし、うーん。
とりあえずSHIGEOは当時甲高い声でラップ歌ってるのに細身の服を着ているというかなり斬新な存在だったと思う。ザ・ヴィリディアンの洋服を愛用していた。スキニーファッションの先駆者かもしれない。降谷建志が当時かなりHIPHOPなノリの格好だったからなおさら際立っていた。
 
その後の爆発的なスキニーのヒットを支えたのはベタなところだとエディ・スリマンだろう。ディオールオムでの一貫したスキニーな服作りは本当に沢山の人を魅了した。シャネルを復活させた男として有名なモード界の帝王ことカール・ラガードフェルドがエディのディオールオムを着るために過酷なダイエットをしたというエピソードは世界に衝撃を与えた。
 
とはいえ、ストリートファッションにスキニーを落とし込んだ時、最も影響を与えた人間がエディ・スリマンかというと少し飛躍しすぎな感がある。では誰か?僕が思うにそれは奈良裕也というストリートのカリスマであろう。
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我ながら素晴らしい画像を見つけ出した。スキニーと言えばやっぱり奈良さんだろう。もっと言えばスキニーのブーツインだって奈良さんが流行らせたと言っていいだろう。現在のストリートファッションを語る上で奈良裕也は絶対に外せない。藤原ヒロシ系列の裏原ブーム以降のファッションシーンに最も影響を与えた男は間違いなく奈良さんだ。これだけは譲れない。奈良さんがチョキチョキをはじめ雑誌メディアに露出しまくっていた頃のストリートブランドに勢いがなかったのは奈良さんがストリートの帝王として君臨していたからなのかもしれない。もう後にも先にも彼を超えるリアルなカリスマは現れないであろう。その一時代に青春を送れたことは僕にとってかけがえのない思い出だ。