東京通信

ファッション、カルチャー

VERSUS TOKYO ファッションシーンにおける吉井雄一の功績

先日の土曜日、VERSUS TOKYOに行ってきた。僕自身は前回に引き続き2回目の参加。本当に感慨深いファッションショーだった。今回はファッションシーンにおけるVERSUS TOKYOの存在意義とそれを主催するMr.GANTLEMANデザイナーの吉井雄一氏の圧倒的なクリエイションについて考えてみた。

「ミスター ジェントルマン(MR.GENTLEMAN)」2015年春夏コレクション - YouTube

さて、いきなりショーについて。
正直鳥肌が立った。最初のショーということで独特の緊張感もあったのだが、何と言っても音楽と空間の世界観が素晴らしかった。洋服が全体的にベーシックでリアルクローズ寄りなブランドがショーをやるのは楽なことではないし、だからこそ見応えもある。


そもそもファッションショーというのは一般人ではなく選ばれし業界人が行く所だ。実際に洋服を着るのは我々一般人なのに業界人だけが招待され、イケてる人種がイケてる人種であることを再確認する場所なのだ。そんなショービジネスをポップさがありながらもカルチャー色豊かなイベントとして我々一般大衆にまで裾野を広げてくれた。これまでのファッションカルチャーにおいても本当に革新的な出来事である。

正直、今のファッションシーンというのははっきりコレといえる分かりやすさがない。
ヴィンテージ、裏原ブーム→ストリートスナップ全盛、サロン系→???

シティボーイや90年代カルチャー復権といったトピックスはあるものの、以前ほど輪郭がはっきりしていない。東京発、東京らしさというムーブメントの中でVERSUS TOKYOが新しいファッションの局面を作りだしてくれるだろうと期待している。


Mr.GANTLEMANについても言及したい。
コレクションを観ても本当にベーシックでクリーンな印象である。あの大柄な中年男性2人がデザイナーを手掛けているとは普通は思えないだろう。ひねりがあるアイテムも多いのだけれど、なんともお行儀が良く見える。シティボーイほどトッポい感じでもない。そして何より値段が他のブランドと比べてかなりリーズナブルだ。
以前見た時はポケットTシャツが定価3000円代で売られていた。普通はブランドイメージ維持のため、セール以外でデザイナーズブランドが意図的に価格を下げるということはしない。セールで売れ残って半額くらいで結局売られることになるくらいなら初めから定価下げろよと僕は常々思っている。だからMr.GANTLEMANの価格設定にはとても好感を抱いている。セールで買い叩かれるブランド服の惨めさと言ったらない。

僕はVERSUS TOKYOもMr.GANTLEMANも同じアプローチで、やはりいかにして消費者に対して身近な存在になり得るかということではないかと思っている。吉井さん自身がずっと飲食店もやっていることが関係あるのかないのかは知らないけれど、消費者に対してファッションショーの敷居を下げ、自身のブランドも手頃な価格帯で提供し、俺の○○ではないけれど、それに近いものを僕は感じる。

ヨウジヤマモトやエイプ、スワッガーといった一世を風靡したファッションブランドの経営が甘くないことはもう我々にバレてしまっている。華やかそうなファッション業界も綺麗事だけじゃ済まないのはもうみんなわかっている。

そう意味で吉井氏によるクリエイションとビジネスの両立には本当に期待している。クリエイターもファッション業界も消費者も全員が幸せになれる世界を吉井さんならきっとクリエイトしてくれることだろう。


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会場で配られたMr.GANTLEMANとコージーコーナーコラボのシュークリーム。こういうところも至れり尽くせりで本当に最高でした。吉井さんありがとうございました!